イラスト:コーチはじめ
無理を言ってくる相手に対し、あなたはイヤと言えますか? もしも言えないならば、心に鬱憤がたまっているかもしれません。気持ちを相手に伝え、自分らしく生きるためのトレーニングを、心療内科医の海原純子さんに教わります(構成=歌代幸子 イラスト=コーチはじめ)

我慢を続けるうちに心に鬱憤がたまってしまう

「アサーティブ」という言葉を知っていますか。日本ではまだ馴染みがないかもしれません。例えば、プライバシーやジェンダーという言葉がひと言で訳しきれないのと同様に、アサーティブという言葉も、たぶんこれまでの日本の社会概念にはなかったものでしょう。

アサーティブとは何かというと、自分の気持ちをしっかり相手に伝えること。シンプルなことですが、日本の女性にはこれを苦手にしている人が多くいます。

本当は嫌だと思っていても、相手に嫌われたくないという不安感や、断ることで今後に差し支えるかもしれないという恐怖感。自分の気持ちを伝えるのはわがままだと思われるのではないか、波風が立つのが怖い……。

これらの理由で「NO」を言わない。または言いにくいことを避けて、その場から逃げてしまう。

そうして相手に服従したり、妥協したり、逃避するというコミュニケーションスタイルは、相手と対等な関係を築けないため、心の中に大きな不満を残します。

相手に自分の意見を言わずに我慢しているとどうなるでしょうか。まず、自分の気持ちを抑えているうちに、自分が本当は怒っているのか、悲しんでいるのかがわからなくなり、どうしたいのかも考えられなくなる。我慢を続けているうちに、心に鬱憤がたまります。

やがて自分の気持ちを抑えていることがストレスとなり、心身の不調を招いてしまうのです。感情が爆発して、ものを投げるなど暴力的になったり、突発的な行動に出てしまうケースもあります。

一方、アサーティブな関係とは、社会的な地位や立場などにかかわらず、相手をひとりの人間として尊重する関わり方です。それは夫婦や親子など、家族関係においても望ましいことですね。

自分の心に正直に生きていくために、そして相手と対等な良い人間関係を築くために、アサーティブを学ぶことはとても大切です。究極的には、自分らしい生き方を追求するのがアサーティブの目標と言えるでしょう。

それは自分の“わがまま”を通すこととはまったく違います。自らが納得し、自分の可能性を生かす人生を見つける手段なのです。