詩人の伊藤比呂美さんによる『婦人公論』の連載「猫婆犬婆(ねこばばあ いぬばばあ)」。伊藤さんが熊本で犬3匹(クレイマー、チトー、ニコ)、猫2匹(メイ、テイラー)と暮らす日常を綴ります。今回は「保護猫エリックあらわる」。隣家の庭先にあらわれた仔猫を、一時的にお世話することになり――(画=一ノ関圭)
その朝、起きたら、集合住宅の隣人からLINEにメッセージが入っていた。「伊藤さん、某さん(うちの左隣)の庭に仔猫がいるので保護していただけると助かります。追い払ったけどまだそこらにいるようです」。外に出ていって、隣人たちがわらわらと「まだいる、ほらそこ」と指さす先を見たら、小さい仔猫がちょこんとしげみの中にうずくまっていた。あたしはすばやくつかみ上げ、少しかまれ、でも隣人たちに喝采された。
仔猫はほんとに小さくて、ケージの中でずっと鳴いてるのだった。目が合うと、シャーッと精いっぱいの怖い顔をするのだった。
あたしは友人のナミさん、これまでに世話した猫は数知れずという保護猫名人に連絡した。そしたら、とりあえず獣医に連れていったほうがいいと言う。感染症にかかっていないか、ノミやダニはいないか、調べてもらって処置してもらったほうがいいと言う。で、行きつけのタカタ動物病院に、ついでにニコも連れていこうと考えた。