19歳になる老犬ニコ。

たいてい眠っているのだが、この頃老衰が進んだようで、眠り方がおそろしい。全身脱力しきって眠るのである。食べる量も減った。ドライフードは食べたがらないが、肉は食べる。でもここ数日食べると吐いて、あっという間に軽くなってしまった。

死も近いかと思いつつ、ニコほんにんは穏やかだから、このままこのままと思っていたのだった。動物病院に連れていったって何かしてもらうつもりはないけれども、ニコを知ってる人たちに、今この状態ですと見せたいと思った。ところがその日、午前中の診察には間に合わず、午後はしめきりと打ち合わせが重なって、まったく動けない。

困っていたところに現れたのが、愛犬教室のカマダ先生だ。この人こそニコをよく知ってる人の筆頭だが(いつも預けている)、なんと二匹を動物病院に連れていってくれたのだった。そしてやってもらったのが、仔猫を登録して諸検査とノミダニの処置。ニコに吐き気止めの注射と脱水症状対策の点滴。

点滴の効果はすごかった。行く前のニコは卵の殻みたいに軽かったのに、帰ってきたのを抱き取ったら、生気と重みが感じられた。そして行く前の仔猫はシャーシャー怯えて怒ってたのに、帰ってきたときにはおとなしくだっこされ、膝の上でちゅーるを食べて眠る仔猫に変貌していたのだったった。「車の中でもずっと撫でていたんですよ」とカマダ先生は事もなげに言ったけど、プロのわざは点滴なみにすごかった。