なぜか3人で、レミパンを持つ……/清水ミチコさん、平野レミさん、阿川佐和子さん(左から)/撮影:清水朝子
平野レミさんの夫で、名イラストレーターの和田誠さんが、2019年10月7日に亡くなりました。多くの人を魅了したイラストや装幀、エッセイはもちろんですが、映画やジャズを愛し、映画監督としての顔も持ち、妻のために歌もつくるというマルチな才能に溢れた和田さん。訃報から3ヵ月後、日ごろからおつきあいのあった阿川佐和子さんもお招きして、寂しいけれど楽しく故人を偲びます(撮影=清水朝子)

※3月3日に「和田誠さんを囲む会」が予定されていましたが、新型コロナウィルスの広がりを考慮し、延期になりました

〈前編よりつづく

直感で出会ってブレなくて

阿川 ミッちゃんも私も、和田さんと飲みに行っては、ジャズやらミュージカルやら映画やら、たくさんのことを教えていただいて、それが自分の次の仕事に役立ったりしていたでしょ?

清水 うん。和田さんはモノマネも好きだったしね。

平野 ミッちゃんのことは、渋谷のジァン・ジァンに出てた時から見に行ってたもの。

清水 サミー・デイヴィスJr.のモノマネ芸を収めたカセットテープも、もらったことある。和田さんはお話が上手だったから、怖い話もお化けの話も不思議な話も、引き込まれるスリルがあった。

阿川 私のいちばんの思い出は、『週刊文春』の対談でジュリー・アンドリュースに会うことになった時、あんまり嬉しくてご報告したら、ご自分が描かれた『メリー・ポピンズ』のポスターと一緒に、「これを覚えていますか、と聞いてごらん」と一冊の絵本を渡してくださったことね。和田さんがまだライトパブリシティに勤めてらした頃、イエナで見つけて、かわいいと思って買った絵本。

清水 ずいぶん前になくなった、銀座の洋書屋さんだ。

阿川 ジュリー・アンドリュースがブロードウェイデビューを果たして間もなく、『マイ・フェア・レディ』のヒロイン役を演じるためにアパートで練習していたら、それに反応して、歌うように吠える犬がいたんですって。近所に面白い犬がいるのよ、と友人の絵本作家に話したら、そのエピソードをもとに一冊の絵本ができたんだけど、巻末に犬を抱いたジュリー・アンドリュースの写真が載っているの。

でも、彼女が世界的なスターになるのは、それよりずっとあとのことだから、和田さんはなにも知らずにその絵本を買っているのだけど。

清水 それが和田さんのすごいところだよね。直感力というか。

阿川 絵本を見せたらジュリー・アンドリュースは喜んで、「なぜこれが日本にあるの? アメリカにも、この本のことを覚えている人はいないのに!」ってものすごくゴキゲンになって、私、とても助けられたのよ(笑)。

私たちにはこういう思い出がたくさんあるけど、レミさんはおうちでそういうお話をなかなか聞けなかったんじゃないかって、こないだ率くん(次男の和田率さん)が言ってた。