「質問したらきっとなんでも教えてくれたんだろうけど、私、質問するようなこと思いつかないんだもの。だから和田さんが、なんで私みたいな女の人をすきになったのか、さっぱりわからないのよ。一度、聞いてみたかったな」(平野さん)

料理って、こういうことでいいんだ

阿川 和田さんのお別れの会を3月にすることが決まったけど、レミさん、まだちょっと元気ないね。でもなにかと忙しいでしょう。

清水 お墓は、もう決まってるの?

平野 和田さんは前に、私の両親のためにかっこいいお墓をデザインしてくれたの。だから、そこに一緒に入っちゃう。

清水 お骨は食べた?

平野 ちょっとカリカリした。だからもう一心同体よ。

清水 まだまだ寂しい気持ちに襲われるだろうけど、目の前に仕事があってよかったよね。

平野 ほんとにそうよ。ありがたいよね。仕事があって本当によかった。

阿川 趣味でもなんでも、人から必要とされる場所があるのは、大事なことよね。

平野 いまは『ごごナマ』に毎週出てるから、新しいレシピを考えるでしょ。大変だけど、それが楽しいのよね。料理って、食べられるもの同士を組み合わせていろんなことができるじゃない。やっぱり、楽しくてしょうがないの。

阿川 「料理愛好家」としてのレミさんのお仕事のバックアップも、和田さんはずっと熱心になさってきたよね。料理の本の装幀や挿絵はもちろんだけど、面白い料理名をつけたりとか。

平野 青山の骨董通りに、「ふーみん」っていう中華料理屋さんがあるじゃない。昔は神宮前にお店があって、和田さんはその頃からのお客さんだったの。そこのねぎそばは汁なし麺にねぎや生姜が乗ってて、熱いゴマ油を最後にジュッてかけるんだけど、和田さんが「麺をワンタンに変えてみたら、おいしいんじゃない?」って言ったんだって。いまや、そのねぎワンタンが看板メニューだから、今度お店の方がうちにご挨拶に見えるの。

清水 和田さん自身が、お料理好きだったんだ。

平野 そうよ。「5秒ビシソワーズ」っていうのがあって、牛乳とトマトジュースを1:1で割るの。あとは塩、こしょうとオリーブオイルで味を調えてバジルを添えるだけ。ただそれだけなのに、とってもおいしいの。和田さんが、最初にそういうことを教えてくれた。私がいまのお仕事をはじめるずっと前のことよ。それで、料理ってこういうことでいいんだって知って、私、いっぱいひらめいちゃうようになったの。

阿川 いまのレミさんをつくったのが、和田さんとも言えるのね。

平野 アイデアがいっぱいな人だった。縁の下の力持ちね。