人はそれぞれに、さまざまな心配ごとや悩みがあるものです。加えて昨今、日本経済は上向かず、犯罪のニュースが後を絶ちません。世界の政情も不安定な状況が続いています。こんな時、聖心会シスターの鈴木秀子さんはどのような心持ちで日々を過ごしているのでしょう。不安との上手なつきあい方を聞きました(構成:丸山あかね 撮影:岸隆子)
欲望と不安はセットでやってくる
今年92歳になり、おかげさまでこの2024年もつつがなく過ごすことができました。聖心女子大学在学中から寮に入りましたので、その時から数えると70年以上も同じキャンパスの中で暮らしていますが、ここでの暮らしは飽きることがありません。
修道院の中庭に咲く四季折々の花、さまざまな鳥たちの鳴き声に心癒やされ、満ち足りた心持ちになります。
高齢のシスターが増えたこともあり、共用のトイレやお風呂などは清掃業者にお願いするようになりましたが、それ以外の身の回りのことはすべて自分でしてきました。こうして92歳になっても当たり前に生きられることに、日々感謝しています。
もちろん、いつまでこの仕事が続けられるだろうか、いつまで自力で歩けるだろうか、といった不安がないと言えば嘘になるでしょう。ふとした折に、老いへの不安はよぎります。
でも自然の摂理に抗うことはできませんし、不安というのは、抗えば抗うほど大きくなる。自力ではどうにもできない未来を憂えて何とかしようともがくから、人は不安になるのです。
ですから、私は「いつまでも自力で暮らしていけますように」と祈ることはしません。「変えられないことを受け入れる冷静さを、変えられることについては変えていく勇気を。そして、変えられるものと変えられないものを見極める賢さを与えてください」と祈ります。
人生はこれに尽きるように思いますね。自分ではどうにもできないことが起こっても、受け入れる力があれば恐れは生じませんから。