不安に心を占領されないために

新約聖書には「明日のことまで思い悩むな。明日のことは明日自らが思い悩む。その日の苦労は、その日だけで十分である」というイエス様の言葉が記されています。

もとより私たちは、いまを精一杯に生きることしかできません。今日に集中して暮らす。もっと言えば、日々の些事に心を込めることから安定した心が生まれます。

不安は弱さの表れですが、弱いところのあるのが人間です。先ほどもお話ししたように、私も不安を抱きますし、不安を抱かなければ危機に備えることもできません。家族が出かける時、「事故に遭わないかしら」と不安がよぎるのは愛の表れでもあるわけで、不安を抱く自分を決して責めないでください。

要は、不安に囚われ続け、心を占領されなければよいのです。過去の経験を思い出して、「また何か起きたらどうしよう」とハラハラしたり、「あんなことさえしなければ」と自分を責めて悶々としたり……。そんな時には深呼吸をして、冷静さを取り戻しましょう。ウォーキングをするなど体を動かすと、ずいぶん気分が変わるものです。

それでもモヤモヤとしたものが残るようでしたら、あなたの不安を全部書き出してみるといいですよ。小さいことまで、すべてです。人は得体の知れないものを怖がる傾向にありますから、何が起きて、それがどうなることが不安なのかを具体的に書き連ねてみるのです。

100個も書き出せば、誰だって自分が囚われていることのバカバカしさに気づくはず。だって、どれもまだ起きてもいないことなんですから。(笑)

このところずっと頭痛がする。これは脳梗塞の前兆じゃないか。脳梗塞が起きたら、こんなふうに暮らしが変わってしまうだろうから、不安だ……。

書き出せば、不安の正体ははっきりします。そして具合が悪いなら病院へ行くしかない、お金のことが心配なら働いたり、節約したりするしかない、と自分のできることに気づくでしょう。変えられることを変えるための努力を怠って「不安だ」と嘆くのではなく、変えるための行動に移す勇気が、あなたにはきっとあるはずです。

後編につづく