「女学校2年の時に終戦を迎え、その日を境に世の価値観が一変したことが、私の人生を大きく変えたように思います」(撮影:岸隆子)
人はそれぞれに、さまざまな心配ごとや悩みがあるものです。加えて昨今、日本経済は上向かず、犯罪のニュースが後を絶ちません。世界の政情も不安定な状況が続いています。こんな時、聖心会シスターの鈴木秀子さんはどのような心持ちで日々を過ごしているのでしょう。不安との上手なつきあい方を聞きました(構成:丸山あかね 撮影:岸隆子)

前編よりつづく

生きている人はみな修行者

かつて、ある青年に「神様なんて見たことがないから、あなた方シスターの暮らしには意味がない」と言われたことがありました。

しばらく経ったころ、その青年がまた私のもとを訪ねてきて、あの日の帰り道で交通事故にあったと言うのです。大事には至らなかったようですが、彼は「思わず『神様、助けてください』と救いを求めている自分がいたことに驚いた」と話していました。

かくいう私も、神様に導かれるように修道女になりました。女学校2年の時に終戦を迎え、その日を境に世の価値観が一変したことが、私の人生を大きく変えたように思います。

忘れられないのは終戦の翌月、校舎の窓から外を見ていた教頭先生が、「いまだに天皇陛下の御真影に挨拶をしている馬鹿者がいる」と言い放ったことでした。

ついこの間まで誰もが御真影を拝むよう教育されてきたのに、尊敬する先生までもがこんなふうに変わってしまうとは。私は非常に強いショックを受け、この先自分は何を信じて生きていけばよいのだろうと思わずにいられませんでした。大学へ進学したのは、揺るがない価値あるものを見つけたかったからです。