市村正親さん
「日本の初代ファントム俳優としては、やるべき運命にあったとしか言いようがありません」(撮影:小林ばく)
舞台、映画、ドラマにと幅広く活躍中のミュージカル俳優・市村正親さん。私生活では2人の息子の父親でもある市村さんが、日々感じていることや思い出を綴る、『婦人公論』の新連載「市村正親のライフ・イズ・ビューティフル!」。第三回は「舞台袖での読書の極意」です。(構成=大内弓子 撮影=小林ばく)

日本の初代ファントム俳優

2014年の初演、19年の再演に続いて3度目となるミュージカル『ラブ・ネバー・ダイ』がまもなく初日を迎えます。僕が演じるのは怪人ファントム。

そう、あの『オペラ座の怪人』のファントムの10年後を描いているのがこの作品なんです。日本の初代ファントム俳優としては、やるべき運命にあったとしか言いようがありません。(笑)

そもそも、『オペラ座の怪人』のファントムとの出会いからして、運命的でした。劇団四季で上演することになったとき、僕はファントムではなく、そのライバル的存在のラウル子爵のオーディションを受けていたんです。

ところが、僕が以前に『エレファント・マン』で障害のある主人公を演じていたことを知った演出家のハロルド・プリンスが、「市村のファントムを聴いてみたい」と言い出した。

さっそく歌の稽古を始めた合間に、小道具部屋で偶然、ファントムの仮面を取った顔の写真を見つけ、あまりの凄さに「ギョッ!」とした。こういう顔をしている人がこの歌を歌っているんだと思った瞬間に浮かんだのが、歌舞伎の『黒塚』の鬼婆でした。