大阪・岸和田のコシノ洋装店に生まれたコシノヒロコさん、コシノジュンコさん、コシノミチコさんの三姉妹は、50年以上ファッション業界で世界的な活躍をしています。そんな三姉妹の初の共著『コシノ三姉妹 向こう岸、見ているだけでは渡れない』が、2025年1月10日に刊行されました。そのなかから、三者三様の人生哲学の一部をお届けします。5月23日からは、連続テレビ小説『カーネーション』のモデルになった母・小篠綾子さんとコシノ三姉妹の人生を描いた映画『ゴッドマザー コシノアヤコの生涯』も公開され、ますます目が離せない姉妹です。
思いがけない妊娠
40歳のとき、パリコレの準備の最中に体調が悪いので病院に行ったところ、妊娠が判明。35歳で結婚してから5年間子どもができず、もう縁がないと思っていたので、自分でも意外でした。まわりもびっくりしたようで、友人たちの反応は「えっ、ジュンコって女だったの?」。私自身も思ったくらいですから、まわりがそう思うのは当然です。
当時はパリコレに出始めて間もない頃でしたし、仕事がどんどん広がっている時期だったので、なぜよりによって今この時期に、とも思いました。でも、産まないという選択肢はまったくありませんでした。
自分のお腹がどんどん大きく、丸くなっていくのが、なんだかおもしろくて仕方ない。羊水のなかで胎児が生きているなんて、まるでお魚みたいだと思ったし、人間の生命の不思議さを感じました。「なんだ、ロケットに乗らなくても、このなかに宇宙があるじゃない」と思い、クリエイティブな発想がどんどん湧いてきたのです。
お腹は三角でも四角でもなく、スイカみたいに真ん丸。だからすっかり「丸」に夢中になって、作る服が全部丸いバルーン型になってしまったほどです。