「誰かから『おめでとう』と祝ってもらえるのは、いくつになっても嬉しいことですから」(撮影:鍋島徳恭)
〈発売中の『婦人公論』4月号から記事を先出し!〉
主演映画『九十歳。何がめでたい』は、幅広い層の支持を集めて大ヒット。数多くの賞を受賞し、令和六年度の文化功労者にも選出された草笛光子さんの次なる主演映画が、この4月、公開されます。美しく、かっこよく。時に周囲のスタッフをからかいながら、楽しそうに『婦人公論』の撮影に向き合う草笛さんの近況をお届けします(構成:本誌編集部 撮影:鍋島徳恭)

レッドカーペットを歩くのが楽しみ!

振り返ると、2024年は慌ただしい1年でしたね。なにしろ、夏に映画『九十歳。何がめでたい』が公開されましたでしょう。ずいぶん長く、そう、70年以上この仕事をしてきましたけれど、私、映画で単独主演を務めたのははじめてのことだったんです。

現役作家である佐藤愛子さんを演じる、しかも自分自身が90歳を迎える年に作品が公開される、というのは「とんでもないことだなあ」と感じていましたが、おかげさまで、ずいぶんヒットしたそうですね。それを聞き、少しホッとしたものです。

実は私も事務所のスタッフに誘われて、近所の映画館に観に行きました。いえ、誘われたというのは嘘。ごはんを食べに行きましょう、とそそのかされたの(笑)。

平日のお昼間の回でしたが、ありがたいことに満席に近くて。こんなにお客様が入ってらっしゃるのかと思ったら急に恥ずかしくなってしまって、途中から映画どころではありませんでした。

映画であれテレビドラマであれ、普段、自分が出演する作品を観ることはありません。試写会すら行きたくないくらい。自分の姿を見るのが恥ずかしいということもありますが、なにより私は舞台が好き。その場ですべてを出し切ることに懸けてきましたから。

出し切ったら、そこでおしまい。あとから見返したり、振り返ったりすることはありませんでした。そんな生き方をずっとしてきたつもりです。

でも、映画館の客席から終始聞こえてくる皆さんの笑い声が、とても嬉しかった。やった、と思いましたし、行ってみてよかったです。スタッフの誘いにも、乗ってみるものね。(笑)