前向きな言葉と素敵な笑顔が人気を博し、102歳の時に出した本がベストセラーになった石井哲代さんは、4月に105歳を迎えます。そんな哲代さんのひとり暮らしの様子を追った映画が公開。4年にわたり取材した監督の山本和宏さんが哲代さんの魅力を語ります(構成:玉居子泰子)
まずはお茶を淹れておもてなし
石井哲代(いしいてつよ)さんとの出会いは約3年前です。『中国新聞』での連載が評判だった哲代さんをテレビの企画で取材することになり、ディレクターに指名されたのがきっかけでした。
さっそく広島県尾道市の山間の集落にあるお宅を訪問。67歳も下の私に対して、孫のように接してくれるその優しさにすぐに引きつけられました。
「まずはお茶を飲んで行きんせぇ」と、緑茶とお菓子でもてなしてくれ、われわれは機材をいったん置いて土間でひと休み。何度も通いましたが、1回で顔を覚えて、「カメラさん」と親しみを込めて呼んでくださいます。
毎回、哲代さんの淹れてくれる熱いお茶をいただきながらみんなで談笑する《儀式》を経てから撮影に入りました。
そんな和やかな取材を重ねて、哲代さんのひとり暮らしの様子を収めた映像は、1回20分のローカル枠で5回、全国ネットを含む特別番組が3回放送されました。
多くの視聴機会をいただいたと思いますが、それでも私はこのまま終わってしまうのはもったいない、と強く思ったんです。
放送の尺に収まらなかった魅力的なシーンを多くの人に観てもらいたい、その後の哲代さんの暮らしと言葉をもっと追いたい。そう思い、映画の企画を立ち上げたものが、このたび公開されることになりました。

1日の終わりに書き留めてきた日記の1ページ/(c)「104歳、哲代さんのひとり暮らし」製作委員会