(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
漢方薬に対して「飲んでみたが効かなかった」「エビデンスがないしあやしい」というイメージをお持ちの方もいらっしゃることでしょう。しかし「漢方薬にはエビデンスが数多く存在し、漢方薬の効き方が一定でない背景には、腸内環境の乱れが深く関わっている可能性がある」と指摘するのは、サイエンス漢方処方研究会の理事長で医師の井齋偉矢先生。そこで今回は井齋先生の著書『漢方で腸から体を整える』から一部抜粋・再編集してお届けします。

クスリとしての性質

西洋医学で一般的に使われている新薬と漢方薬は、薬理学的な観点から見ると“クスリ”としての性質がまったく異なります。

新薬はいつでも(always)クスリです。例えば、高い血圧を下げる作用のある降圧薬は、患者さんの血圧が高くても低くても関係なしに、いつでも血圧を下げるように働きます。つまり、新薬は患者さんを選びません。体に入る前から薬効が決まったクスリなのです。

これに対して「漢方薬」の薬効はいつでも同じではありません(not always)。

例えば、こむら返りを起こしたときに使われる芍薬甘草湯は、こむら返りを起こしている人が服用したときには迅速に薬効を示します。激しい痛みがわずか5分でウソみたいに治まります。

ところが、こむら返りを起こしていない人が飲んでも何も起こりません。病気によって起こる体の変化に対し、ちょうどぴったりの病態を示した人が飲んだときだけ、決まった反応を体から引き出すのが漢方薬の特徴です。降圧薬のように体に入る前から決まった薬効を示すクスリではないのです。