2018年、介護サービス利用者による「セクハラ」の多発が報道され、現場が揺れた。業界の中でとくに深刻な被害を受けているのが、在宅介護を専門とするホームヘルパーだ。安心して介護に従事するには、どのような体制づくりが必要なのか、現場の声からあぶり出す。(取材・文=島内晴美)

感じるストレスは精神疾患につながることも

介護業界で働く人の労働組合「日本介護クラフトユニオン」が2018年6月に公表したアンケート調査で明らかになったのが、介護現場でのセクハラ、パワハラの凄まじさだった。回答者2411人(女性2107人、男性293人)のうち、7割が利用者やその家族から何らかのハラスメントを受けたことがあり、さらに4割がセクハラに該当する行為を受けたという。

介護サービスを提供している最中に、「不必要に体に触れてくる」「胸や腰などをじっと見る」「性的な冗談を繰り返す」などのセクハラがあり、中には「脚や腕をかまれた」「キスをされた」「鍵をかけて逃げられないようにされた」など、恐怖を感じるような事例もあった。

そうした介護従事者の多くが「ストレスを感じた」と回答しているが、うち数%が結果として「精神疾患にかかった」となると、介護者と利用者(あるいはその家族)との個別の問題として放置することはできない。

そのため、厚生労働省がやっと実態調査に乗り出し、2018年度中に対応マニュアルを作成することを決めた。こうした実態調査は介護保険制度が導入されて以来、初めて実施される。都内で訪問介護事業所を運営するS所長に、その実態を聞いた。

「ご利用者からの要望は、どんなに理不尽なものであっても、事業所として誠心誠意、納得していただけるよう説明するという姿勢で臨んでいます。ですが、確かにセクハラ、パワハラまがいのことは日常茶飯事ですね」

自身も主任ケアマネジャーとして介護現場に足を運ぶS所長は、担当する利用者への対応に悩むヘルパーから、パワハラ、セクハラに関する相談を受けることも多い。

「ただ、最近まで、ご利用者の振る舞いが介護従事者に対するハラスメントに当たるという認識はあまりなかったと思います。どんな現場にも、困った方はいらっしゃいますから、なだめたり、すかしたりして対処してこそプロ、というような意識がありました。相談を受けたヘルパーとは、うまくかわす方法を一緒に考えたりしていましたね」

それでも、他人に言えないような嫌な思いをする事例はあったという。しかし、そういう場合、事業所としては、訪問先の担当を代えたり、男性ヘルパーに交代したり、その時々で対応することしかできなかった。介護従事者へのハラスメントがあるということが広く知られ、対策が練られる機運が高まってきたのは一歩前進だと、S所長は感じている。