役場からの電話で知った秘密
ひとり暮らしの叔父が、2022年10月にくも膜下出血を起こし、誰にも看取られず自宅で亡くなった。享年88。彼の妻は10年前に他界しているので、喪主は離れて暮らしていた妻の連れ子のAが務めた。
Aの話では、叔父は「火葬してくれればそれでいい」と言っていたそう。Aが借金をして以来、2人は険悪な仲だった。それでも、やはり死後のことは息子に託したのだなと、私を含め親戚の誰もが思った。だからこそ、借地に建っていた叔父の家を更地にして返す作業は当然Aが担うと思っていたのだ。
ところが翌年、別のいとこがお盆で実家に帰る途中、叔父の家がまだあるのを見た。叔父のきょうだいは皆80歳を超えているので、親戚を代表して私がAに連絡をしたが、電話は繋がらず、LINEも無視。
そのうち役場から、「相続人を決めてください」と電話があった。なぜうちに? と聞くと、火葬許可証に私の夫のサインがあり、連絡がつくのがわが家だけだと言われたのだ。
そういえば、町内会長をしている夫は慣れているからと、遺影など諸々の準備で忙しそうなAを手助けしていた。役場の人にAの存在を伝えると、何と、叔父は彼と養子縁組をしていなかったと言うではないか。
つまり、遺言書なし、子なし、親なし、きょうだいあり。この場合、きょうだいが相続人になる。高齢の叔母たちに代わって、私が対応することになった。
一刻も早く家を解体して更地にし、地主さんに土地を返さなければならない。印鑑証明や戸籍謄本を用意し、ややこしい手続きを経て、ようやく私の名前で解体をお願いできる運びに。
残る問題は家の鍵。叔母は、葬儀の場でAに合鍵を返してしまっていた。音信不通になるとは思わないから仕方がない。ネットで調べると、どうやら窓ガラスを割って入るしかないようだ。通報されては困るので、念のため警察に事前に事情を説明し、準備を整えた。