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生活の欧米化と共に、今では着る機会が激減した着物。着物と距離が生まれた理由の一つに、「着るのが大変」「大変で苦しそう」というイメージがありそうですが、山陰地方で呉服店・和想館を経営する和と着物の専門家である池田訓之さんは、「着物を着るのはそこまで大変ではなく、そして本来苦しいものではない」と話します。着物の心地よさと、秘められたメリットについて池田さんに解説いただきました。*医療情報監修:芝千太郎さん(本名:森川由基。医学博士、芝流舞踊療法研究所・家元付師範、もりかわ在宅ケアクリニック楠・院長)

イギリスと日本の夏の違い

私は以前イギリスで暮らしていたのですが、ロンドンでは、家はもちろん、地下鉄やバスにも、ほぼクーラーは設置されていませんでした。ロンドンでも夏の日中は30度を超えますが、窓を開けて風を通してやれば過ごせたのです。

一方で、日本の夏は蒸し暑くてクーラーなしでは過ごせませんよね。

イギリスと日本の夏の根本的な違いは「湿気」にあると感じています。日本はご存じの通り、湿度が高いので、どうしても蒸し蒸しする。

この蒸し暑さに対処するために、着物は体中を風が通る工夫をほどこしています。

3つの首、頭を支える「首」と、「手首」、「足首」の3つを開けている。だから、着物を着ると頭から手足まで風が通って、蒸し暑さを逃がしてくれるのです。