(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
今年も大相撲五月場所が盛り上がりを見せています。そんななか、「今の十両や幕下以下を見渡すと、のちの横綱や大関を期待したくなるような若い力士が次から次へと出現しています」と話すのは、NHKで1984年から2022年まで、その後ABEMAで今も実況を担当している元NHKアナウンサー・藤井康生さんです。そこで今回は、藤井さんの著書『大相撲中継アナしか語れない 土俵の魅力と秘話』から一部引用、再編集してお届けします。

若い力士が次から次へと出現している

ありがたいことに、幕内に限らず今の十両や幕下以下を見渡すと、のちの横綱や大関を期待したくなるような若い力士が次から次へと出現しています。

大の里(令和6年九月場所後、大関に昇進)や尊富士はもちろん、平戸海、熱海富士、伯桜鵬、阿武剋(おうのかつ)、木竜皇(きりゅうこう)、大青山(だいせいざん)、若碇(わかいかり)、聖富士(さとるふじ)、若ノ勝、琴栄峰(ことえいほう)、安青錦(あおにしき)、草野、丹治(たんじ)と枚挙にいとまがありません。

ただ、そのほとんどの力士が、相撲の名門と呼ばれる高校や大学で実績を積んできています。あるいは、外国から日本の大相撲に夢を抱いて入門してきた若者です。かつてのように中学を卒業してすぐに入門し、大相撲の世界で一から力を蓄えていく力士は極めてまれな存在となりました。

それには様々な要因があります。

・高校や大学での指導者の力量が上がり、すぐにでも大相撲で通用するような人材を送り込めるようになった

・大相撲を目指す子供たちの親が、「せめて高校を、あるいは大学を卒業してから入門させたい」と慎重になってきた

・昭和や平成初期に比べ、そもそも力士を目指す子供たちが激減している

・子供たちにとって、いや親御さんにとっても、大谷翔平選手に代表されるような夢を抱かせる存在が、大相撲ではなくほかの競技で傑出している

など、理由はいくつもあるでしょう。