方言をもっと入れたい
<西村さんは、高知県土佐市生まれ。俳優として活動していたところ、ドラマ『新選組血風録』(2011年、NHKBS)で土佐藩士を演じたことをきっかけに方言指導に関わるように。高知県が舞台の映画『県庁おもてなし課』(2013年)のほか、2023年度前期の朝ドラ『らんまん』でも土佐弁指導を担当した>
『あんぱん』のオファーがあったのは、『らんまん』の放送が終わった1ヵ月後くらい、2023年10月のことでした。『らんまん』でやり切った感覚はあったんです。でも、『らんまん』は幕末から始まり、主人公の万太郎は上流階級ですし言葉遣いも丁寧。もっと方言を入れたかったけれど入りきらなかった。『あんぱん』は昭和初期から始まる庶民の話ですし、現代の高知で使われている方言を入れることができる。「またやれるんだ」とやる気満々でした。
<制作側の依頼を受けて、西村さんはキャッチーな土佐弁一覧表を作成。40個ほど、リストにして中園ミホさんに提案した。そのなかに「たまるか」や「たっすいが」があった>
のぶのキャラクターについて最初に説明を受けたときに、元気なイメージだったので、「まかしちょき」と入れたのですが、「もっと普段から使える言葉を」ということで採用されませんでした。リストの中から、中園さんが選んだのですが、脚本を書く上でフィットしたのが「たまるか」だったんだと思います。
「たまるか」は、感情表現のいろいろな場面で使われる言葉です。ご飯を食べに行って、おいしそうな料理が運ばれてきて、「たまるか」とか言います。「うわあ、すごい」みたいにいろいろ使う言葉なんです。「たまるか」の違う形が「たま」です。年配の方が使っていて、『あんぱん』ではのぶの祖母、くらさん(浅田美代子)が「たま」って使っているんですよ。