写真提供:越乃さん 以下すべて
100年を超える歴史を持ちながら常に進化し続ける「タカラヅカ」。そのなかで各組の生徒たちをまとめ、引っ張っていく存在が「組長」。史上最年少で月組の組長を務めた越乃リュウさんが、宝塚時代の思い出や学び、日常を綴ります。第103回は「新たな趣味」のお話です。
(写真提供:越乃さん 以下すべて)

(前回)久しぶりの京都で感じたこと。越乃リュウ「知らない路地を歩く楽しさ。京都ならではの看板を探す中で、そこに書いてほしいのは…」はこちら

演奏を聴いた瞬間、衝撃が走った

小さい頃から一緒に遊び、妹のようだった従妹は、私が宝塚にいる間にドイツに留学し、いつの間にかプロのコントラバス奏者になっていました。
彼女は私と違って小柄な女性ですが、大きなコントラバスを自由自在に演奏する姿は、なんともカッコいいのです。
そんな彼女を見て、「私も何か楽器が演奏できたら…」と、密かに憧れを抱いていました。

ピアノの弾き語りにも憧れがありましたが、音楽学校のピアノの試験を途中で止められたほどの腕前です。
ピアノは早々にあきらめました。
楽器が演奏できるようになりたいという憧れは憧れのまま時は過ぎ、今年1月、突然その出会いはやってきました。

お仕事で出演させてもらったディナーショーでのこと。
バンドの方の演奏を聴いた瞬間、衝撃が走りました。
サックスの音色。
これがすごかった。

カッコいい!!!

都会的で、スタイリッシュで色っぽい。
そしてその音色には語りかけるような温かさがありました。
一目惚れならぬ「一耳惚れ」でした。

演奏していたのはサクソフォーン奏者、伊勢賢治さん。
サクソフォーン奏者であり、シンガーソングライターであり、音楽プロデューサーである伊勢さんは、松任谷由実さんや矢沢永吉さんなど数多くのアーティストのツアーやレコーディングに参加されていると、後から知りました。
思い立ったら即行動の私は、伊勢さんがどれほどすごい方かをよく知らないまま、ディナーショーが終わるとすぐに伊勢さんにメールを送りました。

「どうか私にサックスを教えてください!」

「師匠、弟子にしてください!」と同じ文面に位置するお願いでした。
お忙しい伊勢さんに勝手に弟子入りを志願するというゴーイングマイウェイで、私のサックスへの道は始まったのでした。