(写真はイメージ。写真提供:Photo AC)
小説『神の汚れた手』など多数のベストセラーで知られる作家・曽野綾子さんが、2025年2月に逝去されました。曽野さんは小説のほか、近年では老いについてのエッセイも手掛けていました。そこで今回は、老いを充実させる身辺整理の極意についてまとめられた著書『人生の後片づけ: 身軽な生活の楽しみ方』から一部を抜粋し、ご紹介します。

私の「手抜き料理」術

1週間、カンボジアとベトナムへ行って帰ってきたら、すぐ料理がしたくなった。自分ではそれほど意識しないが、たぶん料理は私のストレス発散の道楽なので、冷凍庫の中にひと握り残っていた切り干し大根をうすあげと煮ることにした。

つまり冷凍庫の片づけが第一の目的のようなものである。

私は何でもすぐ冷凍にしておく。いただいたクッキーもその日に蓋を開けなければ、すぐに冷凍にする。コーヒーも大缶に手をつけると、残りを冷凍にする。

切り干し大根もその一つだ。日にちが経っても真っ白なままだ。切り干しを煮ながら思いついた。私にこの手の手抜き料理を教えたのは、もう何十年も前に会った一人の旅館の「大女将さん」だった。今からもう40年以上も前のことだ。