埼玉に住む認知症の母親の面倒を見続け、最期は施設で看取った安藤優子さん。現在進行形で高齢の両親を遠方から見守る桜木紫乃さん。育った環境や家族内での立場が違えば、親に対する考え方も異なるようで――。(構成:内山靖子 撮影:玉置順子(t.cube))
母親との同居を思いとどまらせた言葉
安藤 結局、父の死後約3年間は、母が1人で暮らす実家に通っていました。兄は転勤で地方にいる時期もありましたし、姉も私も母本人も心底疲れ果ててしまって……。それで、きょうだい3人で話し合い、母を介護付き有料老人ホームに預けることにしたんです。
桜木 お母さまを預けてよかったと思われますか?
安藤 はい、絶対的に。なぜなら、母のQOL(生活の質)が格段に上がりましたから。実家に1人でいるときは自分で薬の管理や体重管理もできず、認知症になってから激太りしてしまって。それが、施設できちんとカロリー計算された食事をするようになったおかげで適正体重に戻り、降圧剤も飲まずに済むようになったんです。
桜木 よかった。
安藤 とはいえ、入居を決めた当初はかなり抵抗されました。母も大正生まれなので、「親の面倒は子どもが見るのがあたりまえ」という価値観の中で生きてきた。母自身も、舅や姑の世話を最後までしていましたし。
桜木 なのに、自分は施設に入ることになって……。