現代社会では、子どもたちの発達について、「発達障害(神経発達症)」「定型発達」「グレーゾーン」など、さまざまな分類がされています。そのようななか、「診断名にとらわれることなく『すべての人には、それぞれの発達のユニークさがある』という視点を広げていきたい」と話すのは、5歳以上から大人までを対象にした塩釜口こころクリニック院長・精神科医さわ先生です。そこで今回は、精神科医さわ先生の著書『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』から一部を抜粋して、「発達ユニーク」な子どもたちが感じていることをご紹介します。
発達障害の特性は十人十色
グラデーションによって特性の強弱も異なる
「発達障害」とひと言で言っても、その特性は十人十色です。
発達障害の診断を受けた人でも、特性の例にあてはまる項目もあれば、あてはまらない項目もあります。
また、発達障害の診断がついていなくても、あてはまる項目がある人もいます。
ですから、この項目があてはまるから、うちの子は発達障害だと即断する必要もありませんし、過度に不安になる必要もありません。
ただ、子育てをしていて子どもの対応に困っていたり、親子ともに苦しんでいたり、親が常にイライラしていることがあるなら、ぜひ本記事の内容を参考にしてみてください。
そもそも発達障害というのは、白か黒かというように明確に分けるのは、ときに専門家であっても難しいことがあります。
特性が強く出ている子もいれば、弱く出ている子もいて、その濃淡はグラデーションのようにさまざまです。
自閉スペクトラム症の「スペクトラム」という言葉もグラデーションを意味しています。スペクトラムというのは「連続体で、境目なくつながっている」という状態です。
たとえば、運動神経がいい子もいれば勉強が得意な子もいるし、走るのが速い子もいれば遅い子もいますよね。そうしたちがいと、なにも変わらないのです。そもそも発達はみな「ユニーク」なんです。
色にたとえると、発達障害の特性は白でも黒でもないし、単純なグレーでもないということです。
私が敬愛する信州大学医学部教授の本田秀夫先生は、よく「1人ひとりの個性は虹色のようにさまざまで、個性に応じたさまざまな色の子育てがある」とおっしゃっており、本当にそのとおりだと思います。私たちは何色にも染まらない、そもそもカラフルな存在なのです。