知能検査で本当に大切なこと

知能検査で本当に大切なのは、単にIQの数値を測ることではなく、得意なこと・苦手なことを知り、それに合った関わり方や環境を考えることです。ですから、知能検査の結果に一喜一憂しないでいただけたら、とわれわれ専門家は思っています(難しいことは重々承知のうえですが)。

たとえば、言語能力はそれほど高くないけれど、ワーキングメモリー(作業記憶)が高く記憶力が優れている子もいれば、逆にワーキングメモリーが低くて記憶するのが苦手な子もいます。

記憶が苦手な子に、記憶力が必要な作業をさせるのは強いストレスや疲れを感じやすくなります。

その子の特性とともに、まずはその子が苦手なことや難しいことを把握してほしいのです。

※本稿は、『児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(日本実業出版社)の一部を再編集したものです。

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児童精神科医が子どもに関わるすべての人に伝えたい「発達ユニークな子」が思っていること』(著:精神科医さわ/日本実業出版社)

すべての人が「その人にしかない発達の過程」を持っており、発達とはだれにとってもユニークなものなのです。

実際、診断がつかない子どもたちのなかにも、日々の生活や学校のなかで「困りごと」を感じている子は少なくありません。

「病名がないから大丈夫」ではなく、「困っているなら支援が必要」という考え方が、もっと社会のなかに広がっていってほしい──そう思って、この本を書きました。