
私の頃はもう機械化されていましたが、祖父の時代ではノミを使っていたはず…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは鳥取県の60代の方からのお便り。実家が朝ドラ『あんぱん』の主人公と同じ石屋だったそうで、子どもの頃に手伝いをした記憶がよみがえってきて――。
石材店の娘に生まれて
この春からNHK連続テレビ小説で『あんぱん』が放送されています。主人公の生家が石材店という設定です。
私の実家も祖父の代から続く石屋でしたが、3代目として跡を継いだ兄が亡くなり、廃業しました。私も子どもの頃に、家の仕事の手伝いをしたものです。墓石などに字を彫る前に、石にゴムを貼る作業、字を彫ったあとに出る砂をふるいにかける作業。墓を建てる現場にも同行したのを覚えています。
短大を出てから半年ほどは就職先が見つからず、実家で石磨きの仕事をしていました。ドラマを見ていると、昔の人は墓石の文字をノミで彫っています。私の頃はもう機械化されていましたが、祖父の時代ではノミを使っていたはず。きっと大変だったのでしょう。
実家のある町は漁港に近く、漁師さんたちがたくさん住んでいました。どこの家も立派なお墓を建てて、ご先祖様を祀っていたものです。私が仕事を手伝っていた頃、墓を建てに現場へ行くと、休憩時間のたびにお茶やパンなどを出してくれて、昼食にはご自宅で魚料理をフルコースでふるまってくれることもありました。ときには、帰りに魚をいただくことも。