「じつは私、07年に初期の乳がんが見つかったとき、死ぬのかなと思ったんですよ。ああ、あと何回誕生日のケーキを食べられるのかな、何回桜を見られるかなって」(撮影:宮崎貢司)
1980年代に女性芸人として一時代を築き、現在はテレビにとどまらず幅広く活躍する山田邦子さん。2年前に最愛の母親を見送った経験から、「自分らしく死ぬためには、今から準備を始める必要がある」と考えるようになりました。その理由は――。(構成:内山靖子 撮影:宮崎貢司)

前編よりつづく

頭がクリアなうちにやっておくべきこと

振り返ってみると、幼い頃から私は母にさまざまなことを教わってきました。自転車の乗り方や挨拶の仕方、料理のつくり方に裁縫まで。そして、最後に死に方を教えてくれたんだと思っています。

そのなかで学んだのは、自分の頭がクリアなうちに遺言書を書いておくべきだということですね。実は40歳のとき、バラエティ番組の企画で遺言書を書いたことがあるんですよ。

でもそのときはまだ若くて、見返したらちゃんちゃらおかしい内容(笑)。なので母が亡くなった後にきちんと書き直して、公証役場に預けてあります。

延命措置や終末期医療に関して自分の意思を伝える指示書も、医師に相談しながら書きました。私自身の経験から言っても、絶対に書いておかなきゃダメです。文字で書くのが面倒な場合は、動画でもいいから残しておく。これがないと、家族の間で揉めてしまうので。

可能なら、弁護士の立ち会いのもとで「こういう薬は使わないでほしい」「無理な延命はしないでほしい」などと、一筆書いておいたほうがいいと思います。わが家には子どもがいないので、私の意思は夫に伝え済みです。