
地球科学者の鎌田浩毅さん(左)とエッセイストの岸本葉子さん(右)(撮影:岸隆子(Elenish))
政府は今年1月、30年以内に南海トラフ巨大地震が起こる確率を「80%程度」に引き上げました。漠然とした不安が広がるなかで、地球科学者の鎌田浩毅さんは、「2030年代に必ず起きる」と力説します。日本列島に差し迫る危機とは?私たちができる備えとは? エッセイストの岸本葉子さんと考えます。(構成:山田真理 撮影:岸隆子(Elenish))
防災は完璧主義にならないことが大切
岸本 東日本大震災で帰宅困難になった方の話を聞いてから、非常用のセットをポーチに入れて持ち歩くようになりました。中身は携帯トイレ、短く切ったトイレットペーパー、呼子笛付きのミニ懐中電灯。寒い季節はアルミの防寒シートも加えます。あとは黒飴が2個とペットボトルの水です。
鎌田 すばらしいですね。甘い物と水さえあれば、エレベーターに閉じ込められても体力を消耗せずに救助を待てます。LED懐中電灯は一人が持っていれば、ほかの人の避難誘導を助けることもできるでしょう。
岸本 被災地の映像や首都直下地震のシミュレーションを目にすると、「いくら備えても気休めに過ぎないのでは」と無力感に襲われたりもするのですが。
鎌田 防災の備えは、自分でできる範囲でいいんですよ。完璧主義にならないことが大事。たとえば自宅に防災備品をあれこれ準備していても、いざ被災して気が動転したら何がどこにあるか思い出せないというケースも多い(笑)。できるだけ簡単に、家族もわかりやすい場所にまとめておきましょう。
岸本 私は東京のマンションで一人暮らしなので、自宅の防災対策も気がかりです。