毎日のように「物価高騰」が話題に上る今日この頃。その波は“国民食”ラーメンにも押し寄せています。集まらない従業員、原材料や水道光熱費の高騰、外国人観光客に向けた価格設定…。「長く言われてきた<1000円の壁>もすっかり崩れ去ろうとしている」と語るのが、全国47都道府県のラーメンを食べ歩くラーメンライターの井手隊長です。今回はその井手隊長の新刊『ラーメン一杯いくらが正解なのか』から、今、ラーメンを取り巻いている「現実」についてご紹介いたします。
ラーメン店倒産件数が過去最多
ラーメン店の倒産件数が過去最多になりましたというニュースを何度見ただろうか。
東京商工リサーチによると、2024年に倒産したラーメン店は57件(前年比26・6%増)で、集計を開始以降で最多だった2023年の45件を大幅に更新したという。何度も何度も倒産件数のスコアが更新され、ラーメン店を続けていく難しさを物語っている。
その大きな理由の一つは、後継者問題をはじめとする「人」の問題だ。いろいろなラーメン店を取材している中で、この「人」の問題というのは本当に大きい。
近年、ラーメン店は従業員の募集をかけてもなかなか応募が集まらない傾向にある。
各社、労働環境や働き方の改善を図っているのとは裏腹に根強く残るハードワークのイメージが強く、人が集まらないのである。新しい従業員が入っても、一人前に育つまでには長い年月がかかり、その前に辞めてしまうこともある。