(『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』/(c)NHK)
歌麿、政演、北斎、そしてこれから登場するであろう写楽…。江戸文化を彩る絵師が次々と登場する大河ドラマ『べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~』(NHK)。しかし作品そのものは現代でもよく知られていても、「作品が完成に至るまで」について記した資料はあまり残っていません。そんな中、どのようにして絵師たちの生きざまや技を表現しているのでしょうか?その舞台裏では、どのような工夫や苦労が?『べらぼう』で浮世絵指導を担当する向井大祐さんと松原亜実さんにお話を伺いました。(取材・文:婦人公論.jp編集部 吉岡宏)

「ついに大河が!」

――大河ドラマでの浮世絵指導について、オファーを受けた時のお気持ちを教えていただけますか?

向井さん:僕自身は浮世絵の研究をしている日本画家です。自分の絵を描く傍らで、浮世絵の復元模写ということをやってきました。

NHKとの縁は、2017年、北斎の娘を宮崎(*崎はたつさき)あおいさんが演じた『眩(くらら)~北斎の娘』というドラマで声をかけてもらったのが最初でした。

その時、『いつかこういう文化的な内容の大河ドラマをやっても面白いかもね』といった話が現場で出ていたので、『べらぼう』は「ついに来た!」って感じで。

そもそも江戸時代中期というのは基本的に平和な時代ですし、ドラマとして取り上げにくい素材だと思っていて。それだけにお話をもらったときは感慨を覚えました。

松原さん:私も日本画家です。向井とは同級生で東京藝術大学ではともに古典絵画の研究で博士号を取得しました。

私がメインで勉強してきたのは南宋時代の仏画や鎌倉時代の仏画という、今から1000年弱ぐらい前のものが中心。浮世絵師が出てくるドラマということで向井に声がかかったときに誘われて、一緒に仕事をすることになり、ついに大河ドラマまで繋がるとは、まったく思ってもいませんでしたが。