天野篤
(写真提供:講談社ビーシー)
厚生労働省の「令和6年 人口動態統計」によると、日本人の死因第2位は「心疾患」で、22万6388人が亡くなったそうです。そのようななか、「血管や心臓の病気は、長年の生活習慣が大きくかかわっています。そして、加齢とともに発症する頻度は格段に高まります」と話すのは、2012年に当時の天皇陛下(現・上皇陛下)の執刀医を務めた、心臓血管外科医の天野篤先生です。今回は、天野先生の著書『血管と心臓 こう守れば健康寿命はもっと延ばせる』から一部を抜粋し、血管と心臓の守り方をご紹介します。

血液検査で生活習慣病の「兆し」をつかみ、40代以降は動脈の石灰化を把握する

心臓を守るためにより重要なのは血液検査の「生化学検査」

血管と心臓を守り健康寿命を延ばすためには、何よりも生活習慣病の「兆し」を把握しておくことです。高血圧、脂質異常、糖尿病などの生活習慣病の把握のために有用なのが血液検査です。詳細な血液検査によって、突然死もある心臓病につながる生活習慣病の兆しを見つけることができるのです。

これは、20代~40歳くらいまでの若い世代においても有用です。この年代は、徐々に肥満が進んで体形が変わることなどにより、血圧や血糖値が高くなってくるケースが少なくありません。

さらに、遺伝的な高LDLコレステロール血症、糖尿病、高血圧などの体質が加わると、動脈硬化性の疾患が早い段階で表れるリスクが高くなります。その年代で初めて症状が表れたと同時に突然死という場合もあるのです。そうした最悪のケースを回避するために、血液検査が大切になってきます。

就業者の定期健康診断の健診項目は、労働安全衛生法の規定により、「労働安全衛生規則」で定められています。その項目には血液検査も含まれていて、「一般血液検査」と「生化学検査」が実施されます。一般血液検査では貧血や炎症の有無などがわかります。

心臓を守るためにより重要なのは生化学検査で、脂質の中性脂肪、HDL(エイチディーエル)コレステロール=善玉コレステロール、LDLコレステロール=悪玉コレステロール、空腹時血糖(HbA1c=ヘモグロビンエーワンシー)、肝機能(GOT=ジーオーティー、GPT=ジーピーティー、γ-GTP=ガンマジーティーピー)などから、生活習慣病のリスクを推測することができるのです。