登場人物の数だけ存在するサブストーリーが見事に大団円
まずは、2001年に発表された『ドミノ』(角川文庫)を読んで! というのも、恩田陸の長編『ドミノ in 上海』が抜群に面白いんだけれど、この最新作は『ドミノ』の5年後の物語になっており、登場人物が重なっているからなんです。
リフレッシュ休暇で上海を訪れている関東生命八重洲支社の社員、北条和美と後輩の田上優子。夫がこの地で立ち上げた寿司デリバリー会社を手伝っている、和美らのかつての同僚えり子。キョンシーVS.ゾンビ映画を撮るために上海を訪れていたものの、愛するペットのダリオ(イグアナ)が間違って料理されてしまったせいで嘆き悲しみ、一向に撮影を始めようとしないホラー映画監督フィリップ・クレイヴン。映画配給会社に勤務する、神官の娘ゆえにダリオの霊が見えてしまう安倍久美子。
といった前作にも登場した面々に、凄腕の風水師・蘆蒼星(ロソウセイ)や訳ありの骨董店店主・董衛員(トウエイイン)、天才料理人・王湯元(ワントウゲン)、香港警察刑事のマギー、上海警察のイケメン署長・高清潔(コウセイケツ)などの上海勢が加わって、“誘拐”された美術品「玉」の行方をめぐるスラップスティックなストーリーが展開していきます。
ケモノバカ的に嬉しいのが、霊となったダリオはもちろん、上海動物公園から脱走し、故郷の山に帰ろうと試みるパンダ厳厳(ガンガン)の活躍! ものすごく頭がよくて目つきが悪い厳厳の脱出行が、本編にどう関わっていくのか、楽しみに読み進めていってください。前作以上に多勢となっている登場人物の数だけ存在するサブストーリーが絡み合い、そのすべてが大団円にちゃんとつながっていくというドミノ倒しぶりに驚嘆必至。前作から続けて読めば、驚きも笑いも10倍間違いなしです。
著◎恩田 陸
KADOKAWA 1700円