(写真:Adobe photo stock)
近年、日本の伝統文化や価値観にあらためて関心が集まっています。その根底に流れるのが「自然と共に生き、違いを受け入れ、調和を尊ぶ和の心」と話すのが、山陰地方で呉服店「和想館」を営む、和と着物の専門家・池田訓之さんです。今の時代に失われつつある日本文化の価値をあらためて考えながら、これからの生き方へのヒントを解説いただきました。

便利さと引き換えに失われたもの

私がここで言うまでもなく、私たちの暮らしは、この戦後八十年で劇的に変化しました。

欧米に倣い合理主義を基本とする価値観を土台に、戦後の復興、高度経済成長、そしてグローバル化とデジタル化を成し遂げました。これらは日本社会に大きな恩恵をもたらし、「便利」、「効率的」、「早い」ことが価値の中心に据えられるようになりました。

私が幼少のころ、祖母はたらいの中で洗濯板に衣服等をこすりつけて洗っていました。それが今は、洗濯機のボタン一つ押せば洗濯、さらに乾燥まで果たしてくれます。

また祖母は針と糸を使って衣を作ったり直したりしていましたが、現在では洋服は安価で簡単に手に入るようになり、古くなれば捨てて新しいものを買い求めるようになりました。

こうした変化は生活の負担を軽くし、時間的余裕を生んでくれました。しかしその中で、私たちはずっと大切にしてきた「日本らしさ」を手放してしまったようにも感じています。