玄関に出しておいた衣類には目もくれず、箪笥に埋もれる貴金属の有無を尋ねるばかり…(写真:stock.adobe.com)
時事問題から身のまわりのこと、『婦人公論』本誌記事への感想など、愛読者からのお手紙を紹介する「読者のひろば」。たくさんの記事が掲載される婦人公論のなかでも、人気の高いコーナーの一つです。今回ご紹介するのは三重県の60代の方からのお便り。詐欺のニュースを見るたび、思い出す苦い経験は――。

タイムリーな誘惑

最近の詐欺は手口が巧妙で金額も桁違い。ニュースを見るたびに明日は我が身と気を引き締めながら、十数年前の苦い経験を思い出す。

最初は座布団事件だった。私の嫁入り道具で20枚、亡き義母が持っていた20枚、合わせて40枚もの座布団が自宅に眠っていたので、半分処分することに。

ある晴れた日、捨てる分を座敷に積み上げていたら、玄関のほうから「すみません。不要な座布団や布団はありませんか?」と小柄な青年がおずおずと声をかけてきた。「なんてタイムリー!渡りに船だ」と、青年を庭から座敷に上げてしまう。

すると、「これは上等な座布団ですね。ついでに古い羽毛布団もありませんか?」と別の話を始め、十数万円もする軽い羽毛布団を売り込んできたのだ。そして絶妙なタイミングで、目つきの鋭い男性が商品を携えて庭に現れる。これは断れなそうだと、私は八方塞がりで青ざめた。

その時である。隣の部屋にいた愛犬が吠え出し、さらに何やら大きな音も聞こえ始めたので、思わず襖を開けると、そこには大惨事が広がっていた。