かたや永田町で、かたやニュースの現場で、変わり続ける政治を見つめ続けてきた、政治アナリストとニュースキャスターが、平成の政治を語りつくす対談。後編は小泉劇場から、始まります。
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ワンフレーズで引きつける小泉劇場にみんな酔いしれた
伊藤 私は小泉さんて、天才的な花火師だと思うのです。でも花火大会が終わったあとは、漆黒の闇と灰しか残らない。
安藤 ああ、なるほど。
伊藤 小泉政権は大変な高支持率をキープしたけれど、振り返ってみるとあの5年5ヵ月の中で、小泉さんは一体何を成し遂げたのか。唯一の実績は北朝鮮の拉致被害者を一部帰国させたぐらいではないですか。
安藤 そうですね。与謝野馨さんが以前「郵政民営化を一大アジェンダみたいに盛り上げて選挙までやるのはどうなんだ」という趣旨のことをおっしゃっていました。でも私たちは当時「郵政民営化を絶対にやり抜く」という小泉総理を、大変なことを成し遂げようとしているすごい人だと錯覚したような気がします。
伊藤 メディアの盛り上がりも含めて“小泉マジック”にかかっていた。「抵抗勢力」などの強烈なワンフレーズで引きつける小泉劇場にみんな酔いしれていました。小泉さんは「自民党をぶっ壊す」と言って出てきたけれど、本当にぶっ壊したかったのは田中角栄的な政治でしょう。
安藤 本当は「経世会をぶっ壊す」と言いたかったのですね。小泉さんが「昭和」を背負うおじさんたちを抵抗勢力として切るところに、国民は新しさを感じて熱狂しました。我々もそこに無批判で乗せられた反省というか、小泉政権とは何だったのかを検証することが必要ですね。
伊藤 おっしゃる通りです。