とても贅沢な時間
撮影期間も半年を過ぎました。高等女学校4年生、16歳の珠から演じてきて、こんなにも1人の人間の長い人生を演じることができる作品はなかなかありません。毎日次から次へと圧倒的な撮影量。今まで主人公を演じてこられた皆さんはすごいなと感じています。1年間続くことはプレッシャーでしたが、この環境だからこそ学べることもある。まだうまく言葉にはできないけれど、自分が日々たくましくなっていくのを感じています。
<珠が高等女学校の頃、父・清治(渡部篤郎)は病気で死去。子どもたちのしつけに厳しく、家族にきつく当たっていた清治がいなくなったことで、珠は自分のやりたいことに向き合い、小説を書き始める。そして、女学校を卒業した珠は、小学校の代用教員として働き始め…>
洗濯や縫物、帰り道歩いている時…。珠の日々の暮らしの何気ない瞬間が丁寧に描写されていることが嬉しくて。人は、なんでもない瞬間にこそ感情が動く。細かな部分まで演じることができて、とても贅沢な時間を過ごしています。
父親の清治さんがいた頃には、家の中の空気は張り詰めていました。10代の珠は、まだ自分が何者かもわかっていなくて、どちらかというと自分を前に出せないタイプ。そこから、少しずつ「自分はこうしたい、こう生きていきたい」という気持ちがゆっくりと立ち上がっていく。珠が何者かになろうとしている瞬間に立ち会っている感覚があって、変化を演じていて楽しかったです。
珠は常に、「何者か」になろうともがいています。人との出会いで崩れて、また立ち上がって強くなる。私自身は、常に変わりたいと思っている人間です。もっといい表現がしたいし、もっと面白い人になりたい。壁にぶつかる瞬間は苦しいけれど、それ自体が、成長している証。自分がブレイクスルーしたと思ったらまた壁にぶつかる、を繰り返している部分は、珠に似ているかもしれません。