真田ナオキさん(撮影:小林ばく)
甘いマスクからは想像もつかない特徴あるハスキーボイスで、演歌ファンの心をつかむ真田ナオキさん。実はもともと細い声の持ち主だったそうで──(撮影=小林ばく 取材・文=婦人公論編集部)

声に《色》を つける

2011年、東日本大震災の被災地で小学生の女の子が民謡を歌う姿に心を打たれ、歌手を目指そうと決めました。それで民謡を習い始めたのですが、「君は歌の才能がない」とはっきり言われまして。

特徴なく細い声、音程もとれない――悩んだ末「声に《色》をつけよう」と思い、喉をつぶし始めたんです。ひたすら海辺で叫び、唐辛子を食べ、日本酒でうがいをし……。歌の先生に怒られても続けました。僕、意外と頑固なので。(笑)

すると偶然にも今の師匠である吉幾三さんの前で歌う機会に恵まれ、「お前、面白い声してんなあ。弟子になれ!」と言っていただけたのです。信じられませんでした。師匠はレコーディングのときも、「自分らしく、好きなように遊んで歌え」とおっしゃる。歌い手の心を汲んでくれる方で、本当に感謝しかありません。

今年1月には、師匠が作詞・作曲した「恵比寿」という曲をリリースしました。最近、歌い方が師匠に似てきたらしくて、それが嬉しいんです。スターでありながら「面白いおじさん」と言われる師匠は僕の憧れ。人間味にあふれ、遠く感じない。そんな歌手になりたいですね。