左から小島慶子さん、岩波明さん、沖田×華さん
本日の「あさイチ」で取り上げているのは「大人の発達障害」です。この特性については、本人はもとより周囲にも知識や情報が届かず、苦悩を抱えたままの当事者も少なくありません。そこで、ADHDであることを公表したエッセイストの小島慶子さんとトリプル発達障害の漫画家・沖田×華さんが、精神科医の岩波明さんを聞き手に、当事者の生きづらさと、発達障害をとりまく現実について語り合った座談会を2回にわたって掲載します。前編に続き、後編では職場でのトラブルやパートナーとの衝突などについても語っていきます(構成=篠藤ゆり 撮影=浦田大作)

前編よりつづく

過剰な集中力がもたらすパワーと、切れたときの反動

小島 ただ、興味のあることが掛け算になると、マイナスもプラスになることがあるんです。あるラジオの生番組では、聴取者から電話を受け、ゲストに話を聞き、スタッフから差し込まれるメモをさばき続けるという超マルチタスクでした。でも面白かったし、気が散る特性がプラスに働き、どんなに白熱した議論でも隅々に目配りして収拾できた。お陰さまで、それが評価されて大きな賞もいただけて。(笑)

岩波 過剰集中のスイッチが入ると、パフォーマンスが一気に上がることがありますからね。

沖田 2018年に、7本の連載を抱えていたのですが、過剰集中でサクサク仕事が進むので、「この状態がずっと続いてほしい!」と、楽しくやっていたんです。でも住んでいるマンションの大規模修繕工事が始まると、一気に脳が壊れて、字も書けなくなってしまって。

小島 わかります! 私も大規模修繕の時、恐怖心や過呼吸などのパニック障害の発作が起き、うつ気味にもなり、結局引っ越しました。

岩波 音が一番苦手でしたか?

沖田 音もそうですし、工事の人の気配や部屋の薄暗さなどで、無意識のうちにペースが狂っちゃうんですかね。電話もかけられなくなり、やっとのことでLINEで編集者に「なんか死にたくなったんですけど」と送ったりして(笑)。そんな状態を、当事者の間では《メルトダウン》と呼んでいるようです。

小島 私も2人目の子どもを産んだ後、不安障害を発症して、パニック発作とともに、一時的に字の読み書きができなくなりました。それと肛門から脳にかけて脊髄がムズムズする感じがして、我慢できず部屋の中をぐるぐる歩き回ったりして。