イライラしたり、落ち込んだり、やる気が出なかったり……。何をやっても気持ちが奮い立たない日というのはあるものです。原因がはっきりしない時は食事の内容を見直してみては、と栄養学の側面から精神疾患を研究する功刀浩(くぬぎ・ひろし)先生は話します(構成=島田ゆかり イラスト=みずうちさとみ)

マイナスの感情は誰にでも生まれる

うつ病患者、およびその潜在患者は近年増加しており、およそ20人に1人にのぼると言われています。私は精神科医として、心の病の診療と研究を行ってきました。主な原因はストレスなので、これまでの治療法といえば薬物療法と心理療法が主でした。しかしここ10年ほどは、生活習慣が大きく関わっていることがわかり、とくに食事の改善提案を積極的に診療に取り入れています。

骨や筋肉、血液はもちろん、心に関係する脳や神経は、食事から摂る栄養素で作られるものです。

そのため、栄養不足や栄養バランスが崩れた食事をしていると、脳の働きが鈍る原因に。結果、感情が不安定になったり、思考力が低下してしまったりするだけでなく、放っておくと、うつ病などへと病状が進行してしまうこともあるのです。

そもそも、イライラや不安、落ち込みなどのネガティブな感情は誰にでも生まれるもの。けれど体や脳を正常に機能させる栄養素がきちんと供給され、適度な運動と質のよい睡眠がとれていれば、気分転換をしたり楽しい時間を過ごしたりすることで、感情の立て直しができるのです。そのサイクルをきちんと循環させるため、栄養素を意識した食事が大切になってきます。