ジェーン・スーさんが『婦人公論』に連載中のエッセイを配信。(文=ジェーン・スー イラスト=川原瑞丸)
「あきらめない」と「あきらめが悪い」の差
「ボクは死にましぇん!」と聞くと、ある年齢以上の人には自動的に思い浮かぶ画面がある。
当時は感激したものの、あれはドラマだったからだ。現実の世界で、愛を示すために走るトラックの前へ飛び出されたらかなわない。
あきらめないのはよいことだが、「あきらめない」と「あきらめが悪い」には雲泥の差がある。
願望を叶えるため、失敗にめげず何度もトライするのは尊い。しかし、同じやり方で闇雲にぶつかっていくだけでは、結果が運任せになるだけだ。
運や縁を味方につけてこそ叶う夢もあるのは認めつつ、創意工夫がないトライアルは「やってる感」だけがみなぎって、単なるあきらめの悪さだけが際立ってしまう。当事者がそこに気づけないのは不幸だ。