そもそも肝炎って?
肝炎とは、端的にいうと「肝細胞の死」です。肝細胞が傷つき、死んでいくことを肝炎と呼んでいると考えて、まず間違いありません。
肝炎が6か月以内で治まる場合を急性肝炎、それ以上持続する場合を慢性肝炎と呼びます。一般に、慢性肝炎は症状が出ることが少ないのですが、急性肝炎は、全身倦怠感や食欲不振などの症状をともなって発症します。味覚異常を自覚したり、発熱したりすることもあります。これらは、私たちが風邪をひいたときによく経験する症状ですから、軽症でそのうち具合がよくなってしまえば、肝臓の病気だとは気づかないかもしれません。
もう少し肝炎が強い場合には、黄疸(からだが黄色くなる状態)が出てきます。ただし、通常の急性肝炎の場合は、黄疸が出てくるころには肝炎はむしろ沈静化してきて、元気になっていきます。
患者さんのからだが黄色くなっているにもかかわらず、むしろ元気になるという現象は不思議に思われるかもしれませんが、これが肝炎からの回復の兆候なのです。反対に、黄色くなってしかも元気がないというのは、重症肝炎の兆候で注意が必要です。
また、急性肝炎は約1パーセントの頻度で、劇症肝炎に移行します。劇症肝炎というのは、急性肝炎が重症化して肝不全になり、肝性脳症を呈する重篤な疾患です。急性肝炎発症後には、幸い自然に肝炎の症状がなくなったとしても、それが慢性化していることもありますから、注意が必要です。慢性肝炎になっても症状はありませんから、血液検査などをしないと、治ったか治っていないかはわかりません。
急性肝炎という病態は、原因が何であるかを問いません。そのため、急性肝炎という診断が下っても、なおも原因を考えていかなければならないのです。原因次第で、慢性化しやすいかどうかも違いますし、治療法も異なってきます。
ともかく、肝炎はすべての肝疾患の起点になる重要な病態です。本稿では、その中でも肝炎ウイルスに感染することで起きる「ウイルス性肝炎」について、医学による苦闘の歴史を紹介したいと思います。