俳句を始めてみたい人、ちょっと経験のある人にお送りするスペシャル企画です。人気の俳人・夏井いつきさんが講師となり、作句のコツを伝授。これを読めば、すぐ一句詠みたくなること請け合いです(構成=篠藤ゆり イラスト=霜田あゆ美)

「ほかの人の句とアドバイスに学ぼう」はこちら

言葉にして書くと距離を取ることができる

私はつねづね、「俳句は人生の杖になる」と言い続けています。俳句を作って楽しいのは言うまでもないのですが、人生の困難に遭遇したときなど、私自身、俳句に救われたことが多々ありました。

たとえば、病気や介護のことや、何かしんどいことに直面すると、我慢したり、マイナスの感情に飲み込まれたりしがちです。そんなとき、自分ではどうしようもない怒りや悲しみを、句帳に書きとめて文字として認識してみるんです。

不幸に遭遇したら、「本当に腹が立った」とか「悲しくて涙も出ない」とか、感情を言葉にしてちぎっては投げ、ちぎっては投げしてみる。文字にすると客観的になり、負の感情に溺れないですみます。

困難を俳句にすることで自分が救われていたことに、あとからハッと気づいたという方がたくさんいます。俳句に文字化することで、心と距離を取ることができるのです。