お盆の帰省の際に、親の家の片づけをしようと思っている方も多いはず。親の気持ちを害さず、スムーズに片づけるには、どのようにしたらよいのでしょう。数千件の現場を経験した整理収納のプロ・杉之原冨士子さんが、ノウハウを伝授します。

ハードルはあまり高く設定しない

私は20年近く、引っ越しや片づけの仕事に携わっていますが、ここ数年で「高齢者の住まいの物が急激に増えている」と痛感します。

世の中が便利になり、年をとってもコンビニや通販などで何でも買える。一方、ゴミの分別は複雑で手間がかかる。とくに高齢者は、重い物を運ぶのも一苦労です。家の中に物が入りやすいのに、外に出しにくい。今の時代、物がどんどん溜まる仕組みになっているのです。

それに伴い、「親の家が足の踏み場もない状態。片づけてほしい」という依頼が増えています。そこで、現場経験に基づいた、親の家を片づける方法をお教えしましょう。

まず、片づけの主役は自分ではなく、親ということを念頭に置いてください。自宅なら自分の判断で捨てればいいけれど、親の家の物は親の所有物。自分の価値観や判断を押しつけてはいけません。

また、片づけというと物を減らすことに躍起になりがちですが、無理に捨てさせるのは絶対NGです。思い出が詰まった大切な物を捨てることは、大きな喪失感を生むことも。「本当は捨てたくなかったのに、娘に捨てられた」と嘆き、その後の片づけが頓挫する原因になりかねません。

ですから、「スッキリきれいな空間」を目指して進めないこと。目標は「親が安心して暮らせる安全な部屋」。

たとえば、床に物が散乱していたら、つまずいて転倒する危険があります。それを防ぐため、リビングやキッチンなど、生活する動線の床に置かれた物を片づける。逆にいうと、「安心安全」が確保できれば、無理に捨てなくても、たんすに物が詰まっていてもOK。片づけのハードルをあまり高く設定しないほうがよいでしょう。

「安心安全」な状態に片づけるためには、親を観察することが重要。たとえば、肩が痛くて高いところに手が届かないから、物を出しっぱなしにしている。老眼などで細かい物が見えづらく、視野も狭くなって、ホコリが溜まっている。

そういった身体的な理由で、散らかったり汚れたりしているケースがあるのです。子どもに心配をかけたくないため、体の衰えを伝えない親は多いもの。観察することで、「お母さんが簡単に手が届き、使いやすい位置に収納しよう」と、親の目線で考えられるようになります。