バラエティ番組全盛期の1980年代、元祖アイドルアナとして人気を博した寺田理恵子さんはいま、音読や朗読教室の講師として活躍する。「音読の魅力を広く伝えたい」のは数々のつらい経験から立ち直る力の源になったからだ。(構成=篠藤ゆり 撮影=川上尚見)
家族の急死に見舞われて
以前、『婦人公論』に出させていただいたのは夫の急死後、仕事に復帰して間もない2015年のことでしたね。それまでの14年間を専業主婦として過ごしてきたので、これからどんなふうに仕事をしていけばいいか、まだ不安と迷いがあった時期だったと思います。
いまは音読と朗読の講師が仕事の主軸となりました。ほかにも、高齢者が集まるサロンの運営の手伝いや認知症への理解を深めるための活動、朗読ボランティアなどもしていて、忙しくも楽しい毎日を過ごしています。
仕事に復帰するまでのおよそ5年は、思い返しても怒濤の毎日でした。日常的な電話から母が徐々に認知症を発症していることに気づくなか、父が糖尿病や心臓病を患うようになって。その父は09年、検査入院した病院で脳出血を起こし、急死しました。
それは母が施設に入所する日の出来事。父は献身的に母の面倒をみていたので、「きっと自分の役割は終わったと思ったのだろう」と私は自身を納得させるしかありませんでした。