1975年に歌手デビューし、「池上線」のヒット曲でも知られる西島三重子さん。長年、歌手・作詞・作曲家として活躍するかたわら、絵本の作者としても活動しています。2022年10月に発売された『サンタさんのゆめ・トナカイさんのゆめ』(イラストレーター・はせがわゆうじさんとの共著)は、30年以上前に執筆した、思い入れのある物語が元になって生まれました。この物語のもとになった絵本『サンタさんのゆめ』(1990年サンリオ)は、どのようなきっかけで生まれたのか、半生とともに西島さんに聞きました。
(撮影◎本社 奥西義和)
(撮影◎本社 奥西義和)
童話作家になるのが夢だった
私は1975年のデビュー以来ずっと歌手として活動を続けてきて、90年前後は新曲の発表もひと段落し、落ち着いた時期でした。87年にNHKの番組『みんなのうた』で「あいつのハンググライダー」という曲を作詞作曲したのですが、その映像と絵をイラストレーターの黒井健さんが担当してくださったんです。黒井さんが私の詞を気に入って、のちに画集やカレンダーのコピーライトを依頼してくだるようになりました。そのご縁で、当時絵本を出版していたサンリオの方をご紹介いただきました。
実は私、子どものころから童話作家になるのが夢で。そのことをサンリオの方にお伝えしたら、「いつでもいいので、ぜひ作品を持ってきてください」と言ってくださって。そのときに書いた物語が、『サンタさんのゆめ』でした。
サンタクロースを主人公にしたのは、私自身がサンタクロースが大好きだからです。サンタさんって子どもたちに夢や希望を与えてくれますよね。でもみんな、小さい頃は信じてるけど、成長するにつれて信じなくなる。それがすごく寂しくて。子どもたちがサンタさんのことを、もっと夢を持って見てくれたらいいなと思って。
あと、当時は世界中で紛争が起きて暗いニュースが多かった。夢も希望も持てないような世の中になりつつあったので、せめて子どもたちが、夢や希望をちゃんと持って生きていける世界になればいいな、という願いを込めて書きました。