ファンさんいわく、『冬のソナタ』が日本のテレビで放映されていなかったら、ここまでの韓流ブームは起きなかったかもしれないそうで――(写真提供:Photo AC)
なぜ韓流文化は世界を席巻したのか?ドラマ『冬のソナタ』が韓流ブームを巻き起こした「韓流元年」=2003年から20年が経過し、韓国コンテンツは世界中で人気を集めています。日韓コンテンツビジネスに現場・研究の両面から携わり続けているコンテンツプロデューサー、黄仙惠(ファン・ソンヘ)さんは、韓国コンテンツビジネスがグローバルなIP制作・展開体制を築くまでの変遷を辿るとともに、躍進の秘密に迫っています。そのファンさんいわく、『冬のソナタ』が日本のテレビで放映されていなかったら、ここまでの韓流ブームは起きなかったかもしれないそうで――。

韓国ドラマ1・0 韓流が変えた韓国ドラマ、輸出を意識したものづくり

日本での韓流の火付け役となったドラマ『冬のソナタ』。

もし『冬のソナタ』が日本のテレビでは放映されず、従来の韓国ドラマのようにレンタル店に並ぶ作品の一つだったら、ここまでの韓流ブームは起きなかったかもしれない。

韓国のドラマ制作会社であるドレミエンタテインメントのキム・ウノ氏はこう語った。*

「『冬のソナタ』は、総制作費30億ウォンに対して、海外収益のみで290億ウォンの利益を生み出した。(中略)ドラマ制作会社のPANエンタテインメントは、日本やアジアの各地域で媒体別に契約を進めた。その結果、放映権、ビデオオンデマンド(VOD)、オンラインストリーミング、出版、グッズ、さらに公演や音源、アニメーションのライセンス契約を行うことで、IPの活用とそれによる多様なビジネス展開を経験した」

海外進出により、放送権の販売にとどまらず、DVD、出版、グッズ、イベントなどのドラマから派生した商品の著作権料が収益になり、ドラマの挿入曲であるOST(Original Sound Track)までが売り上げに貢献することを実感したようだ。

『冬のソナタ』以後、日本を含め海外での韓国ドラマの需要が高まったことによってドラマの制作会社は、企画・制作の段階で、放送局の編成確約とともに海外のメディアおよび流通会社を対象に先行販売を行った。

さらに海外で多角的にドラマをIPとして活用できるような権利獲得、および放送局との調整を進めた。

韓国国内の編成を控えた段階から海外での幅広い展開を前提とし、現地の需要に合わせてIPビジネスを展開できるようなドラマづくりが必要であることを認識したのだ。

*韓国ドラマ制作社協会主催、2021放送映像コンテンツ産業セミナー「OTT時代、ドラマ制作社の悩みと挑戦:OTT市場の展望と制作社の役割」(2021・6・8)の発表内容を参考。