逆転優勝を果たしたのは新関脇・霧馬山
大相撲春場所は波乱の連続だった。昭和以降初めての横綱、大関不在の場所の最後を盛り上げたのは、関脇と小結の対決。優勝決定戦にもちこみ、突き押し絶好調の小結・大栄翔を突き落とし、逆転優勝を果たしたのは新関脇・霧馬山だった。
単独トップ2敗の大栄翔が優勝すると思っていた。しかし、優勝への扉は1敗差で追う霧馬山に開いていたのだ。14日目、関脇・若隆景が右膝の大怪我によりまさかの休場。対戦相手の霧馬山は不戦勝となり3敗をキープした。相撲を一日取っていないのは霧馬山の不利かと思われた。
大栄翔は今場所、腕がよく伸びて突き押しが冴えていた。千秋楽でも大栄翔は気迫に満ちた顔つき、霧馬山は普通の顔で、顔つきでも大栄翔が勝っていた。
NHKテレビの正面解説の舞の海さんが大栄翔について、「押し込んでいっても、のど輪で勝負をしようとするのはやめた方がいい」と話していたが、やめた方がいい相撲を取ってしまった。霧馬山が押しのまとにならないようにかわし、最後は土俵際の突き落とし。大栄翔は土俵の東に落ちてしまった。
12勝3敗で並び、優勝決定戦にもちこまれた。大栄翔は今度は低く当たったものの、またもや霧馬山に東の土俵際で突き落とされた。大栄翔の手が土俵に着くのと、霧馬山の足が土俵から出たの、どちらがが早いかで、物言いがついたが、霧馬山の勝ちとなった。
波乱の春場所を象徴する逆転優勝。霧馬山は入門8年目で幕内初優勝を果たした。新関脇の優勝は史上4人目。霧馬山の師匠は、陸奥親方(元大関・霧島)である。12日目の正面解説の時、陸奥親方は、霧馬山について、「稽古場の相撲しか取れないと本人が言っている。自分(陸奥親方自身)が(相撲を)取っている方が楽です」と話していた。陸奥親方は霧馬山の本割と決定戦に、現役時代さながらの力が入ったことだろう。