2023年3月13日から、マスクの着用は屋外・屋内にかかわらず「個人の主体的な選択を尊重し、個人の判断が基本」となりました。コロナ禍での長いマスク生活により人前で歯を見せる機会が減ったことで、お口のケアがおろそかになってしまっていた方もいるのではないでしょうか。歯科医の照山裕子先生は、人生100年時代の歯を守り、“食べる力”を長く保ちたい人に役立つ情報を、わかりやすく発信しています。その照山先生いわく、朝きちんと歯をみがいていれば、昼食後にみがかなくても、夜で挽回できるそうで――。
歯みがきの目的
一生、自分の歯で食べたい――
それを実現するために、最も必要なセルフケアは、歯ブラシやフロス、歯間ブラシなどを用いたオーラルケア、いわば歯みがきです。
ですが、診療現場で患者さんと話していると、その知識は人によって差があると実感します。
まず、歯みがきの頻度。「昼食後は必ず歯をみがかなければならない」と思っている方も多いようですが、必ずしもそうではありません。
歯みがきの目的は、歯に付着した食べかすを、キレイに除去すること。
食べかすをそのままにすると、それをエサに虫歯菌や歯周病菌といった細菌が増えます。そして、細菌同士が結びつき、繭のような膜を形成し、バイオフィルムになります。
以前は、歯についたぬめりのことを歯垢あるいはプラークと呼んでいましたが、最近では、歯だけでなく歯ぐきの表面や舌の上など、口の中のさまざまな部分に発生するぬめりを「バイオフィルム」と呼びます。