放送にまつわる調査研究機関であるNHK放送文化研究所。その中に全国のNHK放送局からのことばの電話相談に答えている「用語班」という部署があることをご存じでしょうか。放送が間近に迫った現場にできるだけ明快な回答を届けるため、知識や見識を持ち寄って激論を交わし、限られた時間で答えを出しています。今回は「最近、『爪痕を残す』を良い意味で使う人がいますが、悪い意味のときに使う表現ではないのですか?」という質問に対する用語班の名回答をお届けします。
「爪痕を残す」は良い意味か、悪い意味か
Q 最近、「爪痕を残す」を良い意味で使う人がいますが、悪い意味のときに使う表現ではないのですか?
A 「爪痕を残す」を、「印象づける」といった意味で使う人がいますが、「おかしい」と感じる人もいるので注意が必要です。
「爪痕」について、『大辞林 第四版』(三省堂)は、「(1)爪でかいた傷あと。(2)災害や事件などが残した被害のあと」という2つの意味を載せています。
「爪痕を残す」という表現は、「今回の台風は、県内の農業に大きな爪痕を残した」というように、ニュースでも使われます。
この場合の「爪痕」は、「災害や事件などが残した被害のあと」という意味です。