大八木総監督「個々の力を一つにして組織ができる」(写真:駒澤大学陸上競技部のインスタグラムより)
組織のリーダーや、企業の管理職のなかには「時代の変化に対応しなければ」「なかなか自分を変えられない」と悩んでいる方もいるのではないでしょうか。2022年度の大学3大駅伝で駒澤大学陸上競技部を3冠に導き、2023年4月から総監督を務める大八木弘明氏もまた、当時、時代の流れを感じ、新たな指導方法を模索したといいます。令和の時代になり、何をどのように変えて再び強いチームをつくったのでしょうか。大八木総監督いわく「個々の力を一つにして組織ができる」そうで――。

一人ひとりの育成

コーチ就任から含めて10年の指導を経て、「平成の常勝軍団」と言われるようになった2006年以後も、実績のあるエリート選手が継続して入部してきた。

強い駒澤大学に憧れ、そこで力を伸ばしたいと考えてくれたのだろう。

東京五輪男子マラソン代表の中村匠吾(なかむらしょうご)もその一人だ。

高校時代から全国屈指の力を持つランナーとしてその名をとどろかせ、高い目標を持って入部してきた。もともと故障が多く、入部して2年間は目立った結果が出なかったが、「駒澤大学で強くなりたい」という強固な意志を持っていた。

彼らは順調に力を伸ばし、個人として日本最高峰の試合である日本選手権の5000mや10000mといった種目に出場することも当たり前になり、なかには入賞する選手も出てきた。

そこで戦う相手のほとんどは実業団選手である。年によってはここでオリンピックや世界選手権の代表が決まるハイレベルなレースだ。

その舞台で年齢もキャリアも上の大人を相手に、駒澤大学の選手が真っ向勝負を挑む姿は駅伝とは違う醍醐味(だいごみ)があり、私も夢中になってそこで戦える選手の育成を目指した。