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かつて女性の辛さは「女三界に家無し」と表現されました。しかし現代、「本当に住む家が買えない、借りられない」という危機的状況に直面するケースも増えています。そして男女雇用機会均等法で社会に出た女性たちが、会社勤めをしていればそろそろ一斉に定年を迎える時期に…。雇均法世代である筆者は57歳、夫なし、子なし。フリーの記者・編集者。個人事業主ではあるが、見方によっては「無職」。ずっと賃貸派だった彼女が、60歳を目前に「家を買おう」と思い立ち、右往左往するリアルタイムを、心情とともに綴ります。

前回「安い築古マンション、建物と住民、2つの「老い」という落とし穴。管理組合が反対派と賛成派とに二分されると、建て替え計画は頓挫する」はこちら

古いぶんのリスク

さて。連載前回でお届けした男女のマンションの話に戻りましょう。実は、このカフェに行く直前に私が内見していた中古物件がちょうど、旧耐震ながら、当初はハイグレードマンションとして建てられ、最近、室内がフルリフォームされたばかりの物件でした。きちんと耐震診断・耐震補強もされており、リフォーム後の間取りは単身者が使いやすそうでした。

金額的にも、ローンさえ通れば購入できそうです。都内の築浅物件は高くてとても手が出ない中、きちんと維持修繕されていて、内装リフォームもされているなら、築古でも良いか――そう考え始めていた時、どんぴしゃナイスタイミングで、この男女の会話を耳に挟んだのでした。

そして、ご推察の通り。この男女の会話が、私に「二つの高齢化問題」を思い出させてくれました。古いマンションには、古いぶんのリスクがあったんだ、そうだ、築古の購入はやめよう、となったのでした。

どんなに高級マンションでも、年を経れば建物も住民も変わります。当初は金回りの良かった区分所有者たちの中にも、年齢とともに経済状況が悪化し、修繕積立金などの維持費を出せなくなる人もいます。そうした「管理費未収」「修繕積立金未収」の住戸が増えることは、物件全体の補修・維持管理を難しくし、結果、物件の価値を下げます。修繕積立金が足りなければ、当然、するべき時期にするべきリフォームができず、修繕は後回しになります。結果、「建てた当初は高級だったはずなのに、今は古ぼけてしまった」マンションの一丁上がり、です。

当然、売値にも響きますが、買う側には「お得な、かつての高級物件」と映るでしょう。安いには安いなりの理由があるのですけれど。リフォーム業者が安く仕入れてフルリフォームして相場で売るような場合、専有部分がリフォームされていればなおさら「築古の割にお得」と見えるでしょう。よく「マンションは管理を買え」と言われ、管理状態の良好さがマンションの価値を決めるとされますが、意味が分かっている新規購入者は多くありません。予算重視で購入物件を探す買い手にとっては、管理組合の運営や建物全体の維持補修は、実際、考えるだけの余裕も知識もないでしょう。