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かつて女性の辛さは「女三界に家無し」と表現されました。しかし現代、「本当に住む家が買えない、借りられない」という危機的状況に直面するケースも増えています。そして男女雇用機会均等法で社会に出た女性たちが、会社勤めをしていればそろそろ一斉に定年を迎える時期に…。雇均法世代である筆者は57歳、夫なし、子なし。フリーの記者・編集者。個人事業主ではあるが、見方によっては「無職」。ずっと賃貸派だった彼女が、60歳を目前に「家を買おう」と思い立ち、右往左往するリアルタイムを、心情とともに綴ります。

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管理組合の二人組

あれは今春の、都内で中古マンション探しを始めた、その日のことでした。物件を内見した帰途、私鉄Z駅近くのカフェに、私は遅いランチを摂るために入りました。Z駅は急行も停まる比較的大きな駅で、昔ながらの商店街や飲食店街もあり、若者も多く集うエリアです。カフェには若いカップルのほか、演劇青年らしき一団もいました。

そこへ、「ここにしましょ」と、60代くらいの上品で活動的な雰囲気の黒いワンピースの女性と、白髪痩身のおそらく80代のスーツ姿の男性が入ってきました。二人はたまたま私の隣の席に座りました。父と娘? オーナー企業の元会長と秘書? どんな関係なのか、私の中で妄想が膨らみました。ついつい耳がダンボになります。やがてコーヒーを前に、女性が話し始めました。こんな会話でした。

「値上げが嫌だって言っても、値上げはしないといけないんですよ。ほら、管理会社の××さんも説明してくれたじゃないですか。このままじゃ、管理ができません、って」

女性が男性を説得していました。男性は分かってる分かってる、と口先では賛同しながら、ちっとも納得していない様子です。「値上げっていってもあの金額は……」「今までちゃんとしてなかったんじゃないか」「ほかの会社はどうなんだ」などと、理屈をつけて渋っています。女性は続けました。

「ご存じですよね? **マンション。あそこ、値上げできなかったら、ついに管理会社がいなくなっちゃったんですって。今も売りに出てますけど、すごい安いんですよ。値段が下がっちゃって」

女性はぼそぼそと呟きました。売り出し金額を示したようです。白髪老人は口をへの字に曲げたまま、驚いた様子で目を見開いていました。残念ながら金額までは聞き取れませんでしたが、事情はのみ込めました。つまり、この二人は、このZ駅近くにある分譲マンションに住み続けている区分所有者たちなのでしょう。

おそらく、女性が管理組合の理事長で、男性も理事の一人。推察するに、かなり古い(おそらくは半世紀くらい経っている)マンションで、修繕積立金と管理費の値上げが管理組合で話し合われているようです。値上げをしないと、管理会社が管理は無理、「返上したい」と言いだしている。男性は値上げ反対の急先鋒で、管理会社をすげ替えればいいと主張しているようで、女性は男性を説得するためにお茶に誘った、ということのようです。